結婚してからずっと手料理しか食べなかった父親
父親を見ていて人は変わるんだな、と思ったことについて書こうと思います。両親は私が20歳を迎えた誕生日に離婚。離婚してすぐ母親は、当時付き合っていた男のところへ行ってしまった。
離婚するまでの父親は、家のことは一切何もせず「男は外で稼いで女が家を守る」という古い考えを持つ亭主関白な人だった。
そんな父親への不満をこぼす母親のことも、いつも不機嫌そうにしている父親のことも大嫌いだった。
ご飯の途中に夫婦喧嘩が起きることも日常茶飯事だったため、家族でご飯を食べることは年に数える程度しかなかった。
そして3つ上の兄も当時付き合っていた彼女の家に転がり込み、私は父と2人きりの生活を余儀なくされた。
そんななか、唯一の心の拠り所は高校のときの友達だけだった。だから、父親と2人の生活は苦痛でしかなかった。
家のことは母親に全部任せきりだった父親は離婚して以降、それまでやっていなかった家事炊事も全部自分でやらなければならなくなった。
しかし、洋服ダンスのどこに自分の靴下やTシャツがしまってあるのか、キッチンのどこに調味料がしまってあるのかさえわからないため離婚してすぐは毎週家の整理をして自分仕様にしていた。
仕事の途中でスーパーで買い出しをして家に帰って冷蔵庫にしまう。ついでにお昼ご飯を作ってひと休みすると、また打ち合わせに出て行く。疲れて家に帰ってきては自分食事を作り、食器を洗って片付けてから床に就く。
そんな生活が数ヶ月ほど続いたある日、今までの父親なら絶対に考えられない行動をとった。
冷凍食品を美味しそうに食べる父親の姿
ビール片手に、冷凍パスタを美味しそうに頬張る父親の姿。今まで手作りの料理しか食べなかった父親からは想像できない光景だった。「今日はピザでも注文するか」という言葉が出た日には雪でも降るのではないかと思ったほど。
それからというもの、父の性格はみるみる丸くなっていった。いつも眉間にしわを寄せて険しい表情だったのに、穏やかな顔つきへと変わっていった。
父親が変わったのはおそらく、家のことを自分でやる大変さを痛感したからなのだろうと思う。その様子を今思い出してふとこの言葉を思い出す。
『心が変われば行動が変わる。行動が変われば習慣が変わる。習慣が変われば人格が変わる。人格が変われば運命が変わる』
確かにそうなのかもしれない。心の持ちようで行動も性格も変えられるのだということを感じた今日この頃。親戚を通して話を聞くことはあるが、今のところ母親の所在は不明。